金属除去と炎症のコントロール?

歯科金属アレルギーについて②

 歯科金属アレルギー①では、歯科金属アレルギーについて簡単にご紹介しましたが、ここからは少し掘り下げてご紹介します。

 歯科金属アレルギーは20代~40代に多く、また、女性が男性よりも2倍以上多いという報告があります。また、併発している皮膚疾患としては、アトピー性皮膚炎が圧倒的に多く、続いて、掌蹠膿疱症湿疹乾癬があげられます。歯科金属アレルギーはお口の中の金属が原因のアレルギーですが、症状は直接金属が接触しているお口の中にとどまらず、お口の中の粘膜や消化管から体内に吸収されで顔・首・手・腰・脚など全身性に症状がでます。このことから「全身性接触皮膚炎」と名付けられています。

 

 そもそも、どうしてお口の中の金属がアレルギーを引き起こすのでしょうか。実は、お口の中は金属にとって非常に過酷な環境なのです。お口のなかは、常に水分があり、飲食物によって温度が大きく変化するだけではなく、糖の摂取や炭酸飲料水を飲むことで普段は中性であるお口の中が酸性に傾いたり、咬み合わせや硬い食べ物などにより金属の表面に傷がついたりします。このような過酷な環境下で金属は腐食し「イオン化」します。このイオン化した金属が体内に取り込まれ、タンパク質と結合することで、歯科金属アレルギーが誘発されるきっかけになると考えられています。

 

 では、どのようにして、歯科金属アレルギーを治療するのでしょうか。まず容易に想像できるのは、お口の中の金属を全て除去してしまうことです。しかし、それだけでは十分ではないこともわかってきています。なぜなら、金属自体は、お口の中以外も身近にたくさんあります。食品に含まれているもの、食器に使われているもの、あるいはベルトのバックルや装飾品など全ての金属を生活から取り除くことは非常に困難です。そのため、お口の中の金属を取り除くだけでは根本的な解決とはなりません。

 そこで必要なのは、炎症の除去・コントロールです。炎症は免疫機構にも影響を与え、アレルギー症状が増悪しやすいと考えられています。つまり、金属を取り除くことのみならず、炎症の除去・コントロールをすることがアレルギー治療にも重要なポイントとなります。歯科領域では、慢性炎症である歯周病や根の先にある膿の治療などをおこなうことで炎症のコントロールを行います。

 

 以上のように、歯科金属アレルギーは非常に複雑な疾患です。そのため、治療も複雑かつ長期間となります。当院では治療を始めるにあたり、十分にカウンセリングを行い、治療のメリット・デメリット・リスクをご理解していただいた上で治療を行なっております。まずは、お気軽にご相談ください。